鹿ジャコウは乾燥血で増量され、鉛玉で偽装される。そしてラベルに並ぶ4つの大仰な名、トンキン、チベット、モンゴル、シベリアも、あなたを守ってはくれない。そのうち2つは同じ動物だ。
本物は温かい肌の匂いがし、かすかに甘く、その奥に動物的な何かがあり、ボトルの残り香をひとところにとどめる。

鹿ではなく、4種でもない
ジャコウジカは角を持つ動物よりも、ヤギやレイヨウに近い位置にいる。オスは代わりに牙を持ち、長さは最大10センチにもなる。
musk(麝香)はサンスクリット語で睾丸を意味する。だが実際の香嚢は生殖腺ではなく、香りを蓄える袋にすぎない。
そして4つの取引名は、種ではなく評判を伴う積出港にすぎない。ウードも同じように売られ、港が先、木が後という順序で扱われる。その絡まりを解いたのが 地域別に解説するウードの種類.
トンキンは評判であり、検査結果ではない
トンキンとは北ベトナムの紅河デルタを指すが、最上級品は中国とチベット産として記録されている。地名はその名前自体の裏づけになっていない。
等級同士を比較した査読済み研究は存在せず、主張の出所はベンダーのページであり、品質は香嚢ごとにばらつく。
当店のトンキンの実例は Split No. 006、Ensar Oud Tonkin Musk: Sinensis。柚子と桃がチュベローズの上に重なり、その下にウードとサンダルウッド。親密さと荒々しさが同時に立ち上がる。
Provenance is where care matters, and houses are not consistent.


モンゴルとシベリアは同じ動物
モンゴルのジャコウジカはシベリアジャコウジカだ。違いは書類だけにある。
チベットだけは、二つ目の身分証を持ったシベリアジャコウジカではない。高原が違えば動物も違う。
Ensar Oud Mongolian Musk サンダルウッドとスモーキーなウードの下で、生々しくアニマリックに走る。持続8~10時間、シヤージュは強い。 Ensar Oud Musk Yusuf チベット産の麝香を、熟したアプリコットとサフラン、タイウードで包む。こちらも持続8~10時間、シヤージュは強い。素材が構成を決めるわけではない。
香嚢、粒、鉛玉
香嚢はクルミほどの大きさで、1頭あたり年間およそ25グラムしか採れない。乾燥した香嚢のまま、または粒状にほぐして売られ、ムスコンの含有率が偽装の見分け方になる。
熟成年数も重要だ。 Split No. 003、Ensar Oud Tibetan Musk: Tyger Mylk は、当店の記録では1970年代とされる香嚢を土台にしており、部屋の向こうまで届くというより、肌に肌を重ねるような近さで香る。

法律、そしてある一軒の手口
法律は、多くの小売業者が思っているより短い。野生の麝香が 商業取引で禁止されているのはわずか6か国。それ以外の国では、ロシアや中国も含め、輸出は許可制で回っている。アメリカでは ジャコウジカが1976年から絶滅危惧種に指定され 、ヒマラヤ諸国と中国全域、チベットを含めて適用される。従うべきは条約ではなく、あなたが住む土地の法律だ。
合法だからといって無害というわけではない。ロシアで捕獲されるジャコウジカのおよそ8割は密猟によるものとみられ、罠は雌雄を選ばない。使える香嚢1個のために3~5頭が犠牲になる計算だ。
だから問われるべきは来歴であり、ここに一つの手がかりがある。Ensar Oud自身のページには自社の調達について二通りの説明がある。一つは、その鹿ジャコウは故オマーン・スルタン、カブース氏に由来するというもの。もう一つは、同社が2004年に麝香から手を引き、ロシアが許可制の採取を導入してから復帰したというものだ。両方が真実ということはあり得ない。当店は自社を含め、いかなる香嚢の来歴も検証できていない。主張は主張にすぎない。
率直な一本、Bortnikoff Musk Khabibは、産地を語らずただ鹿ジャコウとだけ記す。海辺の肌の温もりが、オークモスとスモーキーなベチバーの上に。持続8~10時間、シヤージュは強い。もう一方の、日なたのような一本。 Bortnikoff Musk Cologneは、素肌の温もりのような麝香を、タンジェリンとサンダルウッドの下に重ねる。持続6~8時間、シヤージュは中程度。そして声の大きい一本。 Lost Tribe Vanilla Waves V2 Extra Muskは、由来をまったく謳わず、当店のデータで唯一「非常に強い」と記録される、持続10~12時間の一本。
率直さだけが、ここで誰もが差し出せる唯一の来歴であり、 Musk Khabib はそれを他のどこよりも多く差し出している。



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